5月30日放送・NHK「偉人たちの健康診断~女王卑弥呼のカミカミ健康法~」をまとめたものです。

私は最近邪馬台国など古代の時代への興味が強くなっています。
そのため関連番組を見たり書籍を読んだりしているのですが、自分の頭を整理し、弥生時代のイメージをつかむためにこの時代をあつかったテレビ番組をピックアップし、抜き書き整理した上でブログ公開してみることにしました。

「偉人たちの健康診断~女王卑弥呼のカミカミ健康法~」

弥生時代とは、北九州に稲作が伝来した紀元前5世紀ごろから古墳建設が本格化する紀元300年頃までのおよそ700年から800年間を指します。
時代の大きな特徴は、稲作と金属器の伝来と一般化です。
縄文時代の原始性と古墳時代以降の政治性の中間である素朴な時代というイメージがありますが、長きにわたって平和が続き格差も乏しかった縄文時代から一転して戦争と格差が生まれた時代であり、日本人の精神性や文化の基礎が形作られた時代でもありました。

3世紀の日本を描いた中国の書物・魏志倭人伝には、邪馬台国では「人々は長寿で100年あるいは80年から90年生きる」と書かれています。
それが本当なら、弥生社会は現代に匹敵する長寿社会だったということになります。

吉野ヶ里遺跡と並んで邪馬台国の最有力候補地である奈良県纒向遺跡からは大量の食品遺物が出土し、当時の食糧事情を今に伝えてくれます。
その一つが稲の種です。

弥生人の主食は種皮に赤い色のついた赤米で、野生の稲に近い品種でした。
弥生人はこれを土器で炊いたり蒸したりして食べていました。
当時成立した赤米を神に供える風習が、赤飯のルーツという説もあります。
左画像は赤米、右画像は炊いた赤米のご飯です。

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赤米は現代の白米と比べ栄養価が高いのが特徴で、玄米の栄養にタンニンが加わっていました。
タンニンはは白米や玄米にはない外皮の「渋み」二含まれており、これが長寿の秘密でした。
タンニンには「抗酸化作用(とり入れた酸素の一部が体内で有害な活性酸素になって体内を酸化させ老化の原因になるのを防ぐ働き)」があったからです。

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弥生時代は主食と副菜を分ける和食の原型ができた時代でもありました。
縄文時代まではその区別がなかったのです。
画像は弥生時代のご馳走を再現した物。

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和食には世界でも珍しい「口内調味(主食とおかずを口の中でかんで味を調える)」の習慣があり、こうすると別々に食べるより唾液の量が増えることになります。
唾液にはアミラーゼが含まれているので消化が良くなる効果があります。

魏志倭人伝には「倭国は温暖で夏も冬も生菜(生野菜)を食べていた:という記述があります。

纒向からは70種類以上の植物の種が出土しており、弥生人はこれらを旬の時期に食べていたと思われます。

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旬の野菜は季節外れのものより栄養価が高いというのはよく知られた話で、一例では、ほうれん草の栄養価は夏より冬のものの方が3倍高いのです。

纒向でも冬には野菜がとれなかったので、秋から冬にかけてはどんぐりなどの木の実を食べていたようです。
どんぐりはアミノ酸やビタミンAビタミンCを多く含み、アコニック酸にデトックス作用があります。
そのままではあくが強いのですりつぶし、クッキーのようにして食べたと考えられています。
左画像はどんぐり、右画像は現在商品として販売されているどんぐりクッキー。

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稲作の普及は富の蓄積に繋がり、格差を生み出し争いを生む結果にもなりました。
この時期の各地の遺跡からは、戦闘による殺傷痕のある人骨が出土しています。
魏志倭人伝で言う倭国大乱という状態になり、諸国の王が集まって共立した一人の女王が卑弥呼でした。

纒向からは祭祀の道具の他、桃の種も大量に出土しその数は2700個ほどになります。
番組では「桃は稲と一緒の時期に日本に入ってきた植物」と言っていましたが実際には縄文時代には既に日本にあり、6000年前の遺跡長崎県伊木力遺跡から桃の種が出土しています。
もっとも当時の桃は現在の梅に似た感覚で、花を愛でる・種を薬用に使う・実を漬け物にするという形で消費されるもので、生では苦くて食べられませんでした。
今のように甘い桃は明治時代に品種改良されてできたものです。

桃は中国では道教における重要なアイテムで、邪気を払う力があるとされていました。
桃の葉はあせもに効き、種は今でも漢方で使われます。
現代科学で見ると、桃に含まれるピーチアルデヒドは精神をリラックスさせる効果があります。
卑弥呼は桃の香りで皆の心を落ち着かせ争いを避けたのでしょうか?

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巻向の人々はこれほど大量の桃をどうやって手に入れたのかは今まで解明されていませんでしたが、近年、桃の花粉が纒向遺跡の一角で大量に発見されました。
桃の花粉は風で飛ぶということがなくその場に花ごと落ちる性質があるので、この地で桃が栽培されていたと今では考えられています。


大陸や半島から新しい文明を持った人間達がやってきて、縄文人が彼らを受け入れて融合するのに100年ほどかかったといわれています。
しかし完全に混ざり合ったわけでもなく、今の日本人でも縄文系の強い人と弥生系の強い人がいます。
左右両方で唇を動かさずウィンクができれば縄文系、できなければ弥生系といわれています。
縄文人は狩猟生活で目を絶えず働かせる必要があったから目の廻りの筋肉が鍛えられたという考察もあります。

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外来のものが入ってくる過程では、良いことばかりだったわけではありません。
鳥取県の青谷上寺地遺跡からは、10万点以上の遺物と5千体以上の人骨が発掘されています。
土壌が水分を多く含み真空パックの状態になったため保存状態がよく、人骨がこれほど大量に発見されることは稀で、弥生人の健康状態を探るのに非常に適している遺跡です。
現代人の骨で分かる病気はすべて同じように、この弥生人骨からも分かります。

ある頭蓋骨の眼窩部分には無数の穴が空いており、これは貧血から来る症状だそうです。

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その中でも特筆すべきは、下画像の背骨です。
本来積み木のように組み合わさっているものが無惨に潰れています。
結核菌が背骨を潰した脊椎カリエスの状態で、日本最古の結核患者の例です。

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結核菌の発生源はおよそ7万年前のアフリカといわれ、そこからエジプト地中海地域を経て中国にわたりました。

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弥生時代の中国は春秋戦国時代に当たります。
多くの人間が難民として戦火を逃れ、朝鮮経由で日本にやってきて稲作などの文明とともに病原菌も運んできたのです。
青谷遺跡からは船団を彫り込んだ木片や、木製の櫂も出土しています。

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弥生人は。渡来人が連れてきた豚と日本井本からいた猪を掛け合わせた「弥生豚」を開発して飼育していたといわれています。
肉のタンパク質は筋肉を作り免疫力を高めるので結核予防には非常に効果的です。

弥生時代の猪は現代の猪よりも後頭部が高くなっています。
猪の家畜化が始まったこの時代、家畜は野生とくらべ首を動かす必要がないので小型化したと考えられています。

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弥生人はタンパク源として、肉だけでなく魚介類も積極的に摂取していた証拠があります。

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耳の中に小さな骨腫ができる外耳道骨腫の跡です。
サーファーによくできることからサーファーズイヤーとも呼ばれますが、潜水夫にも多いので、海女さんのような潜水を仕事にしていた人の骨と考えられます。
魏志倭人伝にも「倭の水人」といって潜水夫の記述があります。

魚介は縄文時代から食されていましたが、貝を捕る専門の職業人は縄文時代にはいませんでした。
イワガキやイガイなどの貝は今でも青谷の名物です。
貝にはタンパク質の他に高血圧予防や肝機能向上に役立つタウリンが含まれている健康食品です。

以上の事実から、弥生人は稲作だけではなく旬の野菜、肉や魚介も安定して食べ、現代人に不足しがちな栄養素・食物繊維・マグネシウム・カルシウム・ビタミンB1をたくさんとっていたことが窺えます。


さて、結核は過去の病ではありません。
現在でも国内で1万8千人が発症し2千人が死亡しています。
老人や過剰なダイエットで免疫力が落ちた若い女性がなりやすいといわれています。
結核は早期発見が難しい病気です。
初期症状は通常の風邪や体調不良と思われがちで、さらに医療関係者にも、認識不足で結核という判断ができない場合があるからです。
また結核の薬は半年以上飲み続けないと効果がないのですが、患者が嫌になって途中で辞めてしまうこともあるといいます。
さらに現在、耐性菌といって今までの抗生物質が効かないタイプが台頭しています。

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結核以外で特筆すべき点として、弥生人は歯が大きいという特徴がありました。
縄文人と混ざり合った渡来人の祖先はシベリアに住んでおり、
「凍った肉をそのまま食べる」
「皮をなめす際には口でかんで柔らかくする」
という習慣がありました。
そういう人々の子孫なので、歯が大きく顎がしっかりしている形質を受け継いだのです。

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人間の骨格は時代とともに変わりますが、特に変化が大きかったのが江戸時代です。
理由は食べ物が軟らかくなったためで、特に上流階級ほど顔が華奢になり現代人の顔立ちを先取りしたような容貌になっています。
顎の細い瓜実顔が美しいとされるようになったのもこの頃からです。

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ハンバーグと猪肉の塩焼きで噛む回数を実験したところ、回数ならびに筋肉の運動量の差は歴然でした。

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現代人は渡来人の形質を受け継いでいるので顎が細くなっても歯は大きいままで、歯並びが悪くなる原因にもなっています。
歯並びが悪くなると虫歯も増え、噛む力も衰えます。
現代人は顎が細くなっているために親知らずも生えてくるスペースがなく横向けになり、歯茎に埋まるケースもあります。
細い顎は睡い時無呼吸症候群の原因にもなり重大事故を誘発する結果にもなります。

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咀嚼は戦いと同じで生きることそのもの、固いものを排した食生活がよくないと専門家は警鐘を鳴らしています。

現代社会には咀嚼の排除以外でも口元が弱くなる原因があり、それは発声の簡略化です。
現代人は言葉を簡略化し、さらにメールやSNSを多用して声自体出さなくなっているので顎と舌の筋肉がどんどん退化する傾向にあります。
人間の身体で本来一番使うのは顎の筋肉で、噛むとこめかみの筋肉が動き脳への刺激にもなり認知症予防にも成ります。
健康を取り戻すにはまずしっかり噛むこと、そして「あいうえ」をはっきり発音することです!