お金の雑学、最終回。
5月4日放送NHK「突撃!カネオくん」の内容とその他報道をまとめ、最後に独自の考察も加えています。

コインを製造しているのは大阪にある造幣局です(画像は小さいのでクリック)。
明治時代、当初は東京に建設予定でしたが当時の東京は治安が悪かったので大阪になったそうです。

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コインの原型は長い金属板です。それがバームクーヘンのように巻かれているのを、解いて伸ばし1秒間に60枚のペースで丸く打ち抜いていきます。

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こうしてできるのが円形(えんぎょう)という無地のコインです。その上下に金型を押しつけ数十トンの強い圧力で一気に模様を付け、廻りのギザもつけて完成。

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1秒間に13枚の速度、1時間で45000枚のペースで製造されていきます。

現在造幣局では、令和のコインの金型を作っています(画像は平成14年コイン)。
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元号の部分だけ変えるというわけにいかないので、全部作り直すことになります。
大きな部分は機械で造りますが細かい部分は手作業で、職員の中でも一握りの人間にしかできない高度な技術です。

現在、印刷局では新紙幣発行のために原板を彫刻する準備をしています。
工芸官と呼ばれる職員が、ルーペを片手に「ビュラン」という特殊な彫刻刀で肉眼では分からないほど微細に彫っていくそうですが、硬貨の原板製作でも似たようなものでしょう。
工芸官は芸大などの出身者が多いそうです。

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コインの元号のフォントは既存のものではなく独自の物で、デザイナーが手書きで新しく作成する専用のフォントです。
表裏2種類の硬貨の金型を作るのに約2ヶ月かかるので、発表直後から作り始めるとしても市場に出回るのは早くても夏頃になるということです。

硬貨のデザインが定期的に変わるのは偽造防止のためです。
平成11年、本物そっくりの偽500円玉が7000枚押収されたのでそれに対応するため翌年デザインが変わりました。

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画像は角度によって像が見え隠れする「潜像」の技術です。
光の反射の角度を利用したもので、これを使用したコインは世界でも数例のみという大変高度で貴重な技術です。

しかし新デザインになっても偽造は後を絶たず、2014年から2018年まで各年度につき530枚から675枚まで偽600円玉が押収されており、今回のデザイン変更になりました。

500円硬貨の材質は今まではすべて均一だったのが、新硬貨は「クラッド構造」と呼ばれるサンドイッチ構造で、材質が2色3層でさらにその廻りにリングをはめるという構造になっています。

さらに周囲の刻み目は、現在の500円玉は垂直ですが新硬貨は斜めで、さらに角度が違う2種類のギザを刻む異形斜めギザという、これも高度で特殊な技術を採用しています。
「ここまで高度な技術はなかなか真似できるものではないので、どんどん言うようにしています」との担当者の方の自信に満ち溢れたお言葉でした。

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日本の造幣局はその高度な技術がかわれ、アラブ首長国連邦、オマーン、ジョージア、バングラデシュなどの硬貨の製造も請負い、その数は世界10カ国14種類にのぼります。
戦前はグリコのおまけの小さいメダルも造幣局で作っていたそうです。
1964年東京五輪のメダル、国民栄誉賞の盾も造幣局で製造し、2020年五輪のメダルも造幣局が製造することが既に決まっています。

ちなみに硬貨のデザインは造幣局職員が作成するのが一般的ですが1円玉のデザインは公募できまりました。
画像は最後まで候補に残った幻のデザインです。
現行1円玉のシンプルさに比べて、重厚感があり明治時代のコインみたいですね。

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コインを作る枚数は財務省が決め、平成30年に作られたコインはおよそ2046億円分です。

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財務省はコインの発行枚数を社会情勢によって決定します。
たとえば1円玉の発行枚数は、1988年は約12億枚で翌年は約25億枚でしたがこれはもちろん、消費税が導入された年だからです。
2014年にも消費税が5から8になったので、1円玉の製造枚数が跳ね上がりました。

世界的に高い評価を受けている日本のコイン製造ですが、稀にエラーコインもありアンティーク市場では高値で取引されます。
穴あき硬貨の穴ずれは、5円玉が1枚10万円。
今はセキュリティが厳しくなってこのようなコインは出ず、昭和製造のコインがほとんどです。

画像は「影打ち」と呼ばれるエラーコインです。
やや見づらいですが、両面とも10の文字で平等院の模様が無く、表面(右側)の10の文字は反転になっています。

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なぜこのようなコインができるのか。
やや分かりづらいですが、1枚目の画像にあるように熱で溶けて金型にくっついた硬貨が金型の役目をしてしまい、次のコインは裏面は反転した「01」に押しつけられて非反転の「10」になるが、表面は非反転の「10」に押しつけられて反転の「01」になってしまうということのようです。
この影打ち10円玉は1枚110万円。

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その他のエラーコイン
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二つ穴のコインは作ろうと思えば作れるかも……とゲストの方が言っていましたが、無理に空けた穴はプロが見ればすぐ分かります。
硬貨の変造は犯罪ですので、絶対にやめましょう!


キャッシュレスは現代のお金事情について語る時、避けては通れない話題です。
日本人はキャッシュレスへの抵抗感が強い民族といわれ、2017年の調査では賛成が49、反対が51でした。

しかしキャッシュレス大国スウェーデンでは。進みすぎて現金流通量が1,4%
誰も現金を持ち歩かずカードとスマホで決済するのが当たり前。
普通のパン屋さんのような店でも、現金お断りは珍しくない状態です。

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"KONTANTERI"というのが「現金お断り」の意味のようです。
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1990年代のバブル崩壊により金融危機に陥りスウェーデン政府はIT革命に乗り出しましたが、その柱がキャッシュレスでした。
今や交通機関の運賃、公共施設の入場料も現金お断りで、スウィッシュというスマホ用のモバイル決済アプリで支払うのがスウェーデン人の日常となっています。
支払先の提示する番号と金額、口座の暗証番号を打ち込めば自動的に口座から引き落とされます。
2012年7銀行が共同開発したシステムで、国民の6割が使用しています。


このシステムの導入で、様々な利点がありました。
・レジ混雑の解消
・少人数での店舗運営が加納になる
・閉店後のレジ締めの簡便化
・これまでより1時間早く業務終了できて人件費が削減された
・現金に触れないため衛生面も向上
・市中に現金がないため強盗被害も減り治安が向上(2008年には110件だった強盗被害が2015年には7件)

露店・教会での寄付や蝋燭購入・路上パフォーマンスへのおひねりもスウィッシュです!
画像の赤い○で囲んだ部分に振り込み番号が掲示されており、聴衆はその番号を打ち込んでお金をあげるということになります、

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個人同士での割り勘や子供への小遣いもスウィッシュ。
何に使ったか把握できるので親は安心だそうです。

スウェーデンの銀行は送金などすべてデジタル管理で、金庫もATMもありません。
街角のATMはここ数年で半減し、今のスウェーデンの銀行は憩いの場所で市民にデジタル操作や資産運用を教える場所となっています。
同国の中央銀行は、5年後には完全なキャッシュレス社会になるとの見通しを立てています。

しかしキャッシュレスには落とし穴も。
スマホが電池切れになったら終わりなので充電器が手放せません。
その他にも難点はありますが、電池切れの心配を解消するのがICチップの体内埋め込みです。
1センチほどのチップを右手に埋め込み、センサーにかざすだけで支払いが完了します。
支払いだけでなく個人認証にも使えるので、最近では、左手のチップで会社の鍵を開け、右手のチップで会員制ジムの認証をして入店するという使い方をする人もいるとか。
チップは注入器込みで約2万円、埋め込み費用は1万3千円。

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スウェーデンの導入者は現在4500人。

他番組のアメリカ人の証言として「インフルエンザの予防接種より痛くない」そうですが、はたして?

アメリカのキャッシュレスの普及率は45%です。
世界屈指の先進国としてはかなり低い印象がありますが、デジタル決済を使用するには、銀行口座を持っている・スマホを持っていて使えるという大前提があります。
すなわち一定のリテラシーと経済力、住所と身分証明がある人しか使えません。
そのためアメリカの一部の州では、現金決済できない店は作ってはいけないという法律もあるそうです。
確かに、ホームレスを含む本当の貧困層は、完全なキャッシュレス社会では身動きが取れなくなってしまうのではないでしょうか。

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インドもIT大国のイメージに反してキャッシュレス化が進んでいない国ですが、実はかの国では物乞いが一大産業になっています。
ボロボロの格好をした人が観光客に近づき、振り込み番号やQRコードを記した紙を突きつけて「お恵みを」というようになる時代がしのうちやってくるのか、といえばまずあり得ないと思います。
元締めに支配されている貧困ビジネスということの証明にしかならず観光客もそんなことに協力したくないだろうし、元締めとしても金の流れを当局に知られて脱税ができなくなるからです。

日本はいまだに現金信仰が強くキャッシュレスが先進国としては進んでいませんが、経済産業省はキャッシュレスを推進したい意向です。

理由の第1に、外国人観光客対策。
中国や韓国など電子マネー決済が進んでいる国の訪日観光客は「日本で電子決済がもっと普及していればもっとお金を使った」という意識調査の結果もあります。
そのため政府は、キャッシュレス決済においてポイント還元をする際の費用援助・中小店舗の決済端末機購入の補助を行い、「2019年度当初予算で合計2798億円にものぼる。来年度分も含めると9カ月間で約4千億円近い税金をつぎ込む(朝日新聞調べ)」ということを行っています。

日本でもスイカのようなチャージカード、QRコード決済などキャッシュレスはそれなりに普及しているのですが、その割合は先進国の中では圧倒的に低いものです。
理由としては、「浪費しそう」「セキュリティが心配」「災害が多いので停電したら使えないキャッシュレスは信用できない」等々。
また治安が良く現金を持ち歩いても強盗に遭う心配がない、紙幣硬貨の精度が高く偽金を掴まされる心配がないなども理由のようです。
店舗側にとっても、端末機や手数料のコスト、入金の遅さなどから、現金で決済してくれるのが一番嬉しいというのは有名な話です。

しかし上記スウェーデンのようにレジ締めの手間が激減しコスト削減になるという現実もあります、
試算によると、日本社会におけるレジ締め・現金両替・釣り銭の準備・現金振り込みなどにかかるコストは年間5千億円。
街角のATMの管理や警備にかかるコストは年間約7200億円。
完全キャッシュレス社会になれば、これらのコストを本業に回すことが出来て生産性を向上させられるというわけです。
実際に銀行は、現在ATMを他行との共有化などで徐々に減らす傾向にあります。

しかしキャッシュレス化を貫徹すれば、国家側には脱税・マネーロンダリング・麻薬売春などの違法な金の流れがすべて見えるようになるといい、実は一番の目的はこれなのではないでしょうか?

違法な金の流れが撲滅されるのは良いことですが、ことはそれだけにとどまるものではないでしょう。
素人考えでも、たとえば書店で本を買うとレシートには書名が印字されます。
現金決済ならそれで終了ですが、デジタル決済だと、個人がどういう本を買ったか、どこに行きどういうことをしたのかなどその決済の管理者やひいては権力者に筒抜けになりかねません。

そのうちICチップをも超える支払い方法が発明され、快適で便利になるも金の流れは企業から個人間のものまですべて権力側に筒抜け……
本の購入歴で思想調査、友人との割り勘で交友関係の把握。

そんな時代が、そのうちやってくるのでしょうか?