お金の雑学、もう少しだけ。

ファナム金貨ファナム金貨2インド南部には14世紀末から20世紀中頃にかけてマイソール王国という国が栄えていました。

この国は17世紀に発行したファナム金貨が世界最小の貨幣といわれています。
画像はこれで直径8ミリです!
また「ファナム金貨」で画像検索するとこれ以外にも様々なデザインがあるようです。

世界最大のお金は、太平洋ミクロネシア連邦ヤップ島の石のお金です。石のお金
手のひらサイズから3mの大きさのものまであり、写真の子供が身長130センチぐらいとすると最大の物がどれだけ大きいか分かります!
島は珊瑚礁でできているので石が貴重で、500km離れたパラオ島から石を運んできてお金にしていました。
この石の貨幣は現在では流通しておらず、アメリカドルが中心となっています。
特に巨大なものだと容易に動かせないので、石に名前を書いて取引の際にはその名前を書き換えて、置き場所はそのままで所有権だけが移ったことにしていたそうです。
一見奇妙に思えるかもしれませんが、物質としてのカネの物理的移動がないまま所有権の概念だけが動くというのは、現代社会の「キャッシュレス」「仮想通貨」の感覚に通じるものがある気がします。



最大紙幣最大紙幣2世界最大のお札は1375年の「大明通行宝鈔」で、長さH338・幅220mmです。
紙のB4サイズが  364 ミリ× 257 なので、A4より大きく、B4より一回り小さいだけの大きさということになります。
これだけ大きいとお金と言うより書類です。
藁と桑で作られており紙質が弱く、折りたたみには不向きで実用に適さなかったそうです。
名称と額面の他に「偽造犯は斬る、通報した者には褒美と犯人の財産を与える」と書かれており、逆にそれだけ偽金造りが横行していたことがうかがえます。
中国は世界最初に紙幣を発行した国(10世紀末の交子)でもあります。



宰相の紙幣世界最小のお札は1915年にロシアが発行したカペイク紙幣で、縦3センチ、横2.4センチ。
第一次大戦中の物不足に対応するためこのサイズになり、切手のデザインを流用して作られました。
ちょうどその数年前のロマノフ王朝300周年記念切手のデザインをそのまま使ったため表面上部には「почта(郵便)」の文字がそのまま残り、裏面には「同額の銀貨と交換できる」という但し書きが印刷されています。
1カペイクから20カペイクまで6種類ありました。
1シート100枚として発行され、厚手の紙を使用し裏面に糊もついていませんでしたが間違えて切手として使用してしまう人が続出したため法律で切手としての使用を禁じたほどでした。

ロマノフ王朝は革命で1917年に倒れましたが、革命政府のもとでも切手紙幣の発行は続き、クリミアやウクライナなどの地方政府でも同じように切手紙幣が発行されました。
1919年にはソビエト政権下でハンマーと鎌のデザインの切手紙幣が発行されています。

日本最大のお札は明治24年の100円札で13センチと24センチ。最小のお札は昭和23年の5円札で48ミリ、94ミリです。


ポリマー紙幣「紙幣」というように日本人は硬貨以外のお金といえば紙という感覚ですが、世界には様々な材質のお金が存在します。
オーストラリアは1988年、プラスチック製の紙幣(ポリマー紙幣)を世界で最初に発行し、現在世界各国で普及採用されています。
日本人にはなじみがありませんが、原材料が一般人には入手しづらく偽造しにくい・折りたたみに強く丈夫という特性があるそうです。


中国では1933年、布製のお札「工農銀行券」を発行しました。チベット紙幣
その他過去にはチベットではわらのお札、ドイツでは革製や布製のお札などが存在しました。
明治10年、西南戦争で西郷軍が発行した紙幣「西郷札」は布製でした。
チベットの藁の紙幣というのがどういうものなのかはわかりませんが、1950年代まで使われていたという木版刷紙幣(100サング)の画像を貼っておきます。


アメリカでは1万ドル札がありますが400枚しか発行されず、コレクター品となっています。
その他100ドル以上の紙幣は、実社会で使用されて銀行に戻り次第破棄されてしまうそうです。
シンガポールにも1万ドル紙幣(約82万円・2019年4月時点)がありますが、やはりあまり流通はしていないようです。
日本でお札のサイズが小さめなのは将来5万円札や10万円札を発行する時のためだという都市伝説がありますが、実際には原料節約のためでありあまりに高額な紙幣は流通もしにくいので今後もこれ以上の高額紙幣発行の可能性は低いと思われます。

バーコード紙幣オランダは1991年に具象物の一切描かれていないバーコード入りの紙幣を発行しましたが、ユーロ導入で廃止されました。




裏白紙幣昭和2年、金融恐慌に対応するため大量の紙幣を発行する必要があり、裏面が白紙の200円札が発行され「裏白紙幣」と呼ばれましたが恐慌が収まり次第すぐ回収されました。






ヨーロッパのコインは金属の固まりに発行者の極印を押したものが始まりでした。フランスのコインには「フランスの王」という文字が刻まれていたので通貨単位がフランになりました。
ドイツのマルクは元は重さの単位で、それがスウェーデンやノルウェーでお金の単位として使われ、ドイツでもお金の単位になりました。

1516年、南ドイツのヨアヒムターレルという所で銀山が発見され、その銀から銀貨が作られ地名の一部を取ってターレル銀貨と名付けられました。
ターレル銀貨はヨーロッパ中に流通し、北欧ではダレル、イタリアではタラーリ、スペインではドレラと呼ばれました。
スペインはアメリカ大陸でとれた銀を使い自国のドレラを作り、その英語読みがダラーでドルのもととなりました。
日本でも明治5年に横浜為替会社(横浜銀行のルーツ)がドル札を発行しています。

ターレル銀貨オーストリアの1ターレルコイン(マリア・テレジアターレル)は1780年に作られ、近代的な統一政府や中央銀行がないアフリカ中東地域で流通していました。
イエメンでは1977年まで公式貨幣として認可されていたそうです。
つまり193年間貨幣として通用していたことで、非常に長いと言えますが実はこれよりさらに長期間通用していた貨幣が日本に存在します。

江戸幕府が1636年に鋳造を開始した4文銭「寛永通宝」は広く流通し、約230年後に幕府が倒れてもしばらくは貨幣として通用していました。
昭和初期まで使用され、正式に貨幣としての法的価値を失ったのは昭和28年(1953)です。
実に330年近く、貨幣として存在していたということになります!


自動車コイン貨幣や紙幣に乗り物がデザインされることは多くありませんが、その中で一番数が多いのは船です。
機関車が日本や中国の紙幣にいくつか例がありますが、自動車というのはほとんどありません。

画像は1928年に中国貴州省で自動車道路が開通しその時の記念に発行されたものです。
おそらく世界で唯一の自動車デザインのコインだと思われます。

世界には人物肖像の代わりに鳥や魚が描かれたお札もあります。
日本にも鳳凰や鶴デザインの紙幣はありますが、祥瑞のシンボルとしてのイメージが強いそれらの生物ならともかく、一般的な鳥や魚や乗り物のデザインのお金はすぐ手元から逃げていってしまいそうです。
お金を社会に循環させるためにはむしろその方がよいのかもしれませんが。


ブラジルの500クルゼイロ札は同じ人物の顔が上下左右対称に描かれています。クルゼイロ
お金を渡す側と受け取る側が肖像を確認できる効果があるといいますが、他の地域に普及していない所を見るとやはり効果より違和感が強いのでしょう。
お札には大抵人物肖像が描かれ、コインでも同様です。
コインに人物を描かないのは世界では日本とイスラム教国家ぐらいだそうです。


タイの貨幣画像はタイの双魚貨というお金です。

江戸時代の金貨は長方形でしたがこれは世界的に珍しい形だそうです。

その他真四角に近いコインや7角形、12角形コインなど様々な奇抜な形のコインが世界には存在しますが、紙幣は基本的に長めの長方形に横長印刷が主流です。
中世から第二次大戦後しばらくまでは、正方形やそれに近い長方形、また縦長印刷の紙幣が各地で発行されましたが現在ではどこの国の紙幣も例外なく「長めの長方形に横長印刷」です。
四角形以外の丸形や三角形のお札が発行された例は過去にもありません。


現行紙幣と貨幣を額面より高かったり低かったりする値段で売買しても違法ではないとされています。
確かに、これを禁じたら額面1円の大黒札は1円分でしか使えないことになるし、通常使用の通貨でエラー印刷のものが額面を遙かに超える高値で売買されているのも違法ということになってしまいます。

しかし近年、ヤフオクやメルカリといったオークションサイトに、希少価値があるわけでもない通常紙幣が額面以上の値段で出品され、買い手がつく事態が起きています。
ほとんどが1万円札なのが特徴で、1万円札3枚を3万6千円などで出品しています。
売る側の事情としては後ろ暗いお金を洗浄するマネーロンダリング。
買う側の事情としては、多重債務に陥りキャッシュカードがもう使えないがクレジットカードはまだ使えるのでとりあえずそれで現金を入手して返済に充てる。
そのような事情が考えられ、どちらにしても反社会的なのでサイト側は現金の出品を禁じるようになりました。
suicaなどのキャッシュレスカードを多額にチャージしたものを出品する行為も、同様の目的がある読みなされ同じく出品禁止になっています。

2700年前、トルコのリディアで誕生した「お金」は様々なバリエーションを産み、経済を活性化させて社会を発展させ、人々の欲望を喚起し、時には暴走させ思いも寄らなかった悪事も生み出しながらも今日も地球の隅々まで行き渡り世界を動かしています。