お金の雑学をもう少し。
余り深掘りせずざっとまとめています。
日本の紙幣には「1000YEN」のように円がYENと表記されています。
この頭文字Yが¥記号のもとにもなっていますが、なぜENではないのか。
日本銀行HPによると、円をYENと表記する理由について「はっきりしていない」としながらも次の3点を挙げています。
○「EN」は外国人が発音すると「エン」より「イン」に近いものになるとして、Yをつけて「YEN」としたのではないかとの説。幕末日本を訪れた外国人の記録には「江戸」を「YEDO」と表現したものがある。
○「EN」は、オランダ語では「〜と」、「そして」の意、スペイン語、フランス語では「〜の中に」の意を持つ、よく用いられる語であるため、これらと同じ表記を回避したとの説。
○中国の「元」紙幣は、表に「〇圓」、裏に「YUAN」と表示されていた。これが「YEN」に転化したとの説。
コインの裏表は法律で決まっておらず、製造年号のある方が表、ない方が裏という慣習になっています。
この製造年はコインには必ず刻印されていますが、お札にはありません。
お札の寿命はコインに比べ短いので制作年を印字する必要がないのです。
今でも昭和年代のコインが流通しているように金属製のコインは何十年ももちますが、お札の寿命は1万円札が3年から4年、5千円札と千円札が1年から2年程度だそうです。
コインの制作方法は、今川焼きのように溶けた金属を型に流し込むのではなく、薄い板を丸く打ち抜き、上下から模様の原板を押しつけて図案をつけるというものです。
その模様の型は、まず現物の5倍くらいの大きさのモデルを作り、それを縮小したものです。
額面の高い金貨と銀貨が使われていたころは偽造を防ぐため模様が非常に細密でしたが、今はコインは低額面のため模様は単純です。
10円硬貨の模様があれほど細密なのは、銀貨用のデザインを転用したものであるためです。
コインのデザインは造幣局職員が考案したり一般公募するなどして決まります。
1円玉の若木は何の木でもなく、戦後初の一般公募で採用されたものです。
5円玉は昭和23年に穴無しで発行、翌年穴あきになりました。
50円玉は昭和30年から4年間穴無しコインでした。
100円玉のコインはデザインが変遷し、鳳凰(昭和32・銀貨)→稲穂(昭和34)→桜(昭和42・白銅貨)
500円玉は淵のギザギザが大量生産型では唯一斜めについています。
古い500円硬貨は銀色で白銅製、縁にギザがなく「NIPPON◇500◇」という文字でした。
偽造が多くなったので1999年に製造中止され、今の斜めギザギザになりました。
お札は肖像がある方が表で日本銀行総裁の印章、裏に日銀発券局長の印章がついています。
篆書で「総裁之印」と押され、裏面には「発券局長」と同じく篆書で押されています。
二千円札の紫式部・光源氏・冷泉院の書かれている面は「発券局長」の印が押されているので裏面ということになります。
紙幣の国名表記は、明治18年に100円札と1円札を発行した際、当時の大蔵大臣と日銀総裁が薩摩出身で薩摩では日本のことをニッポンを言っていたためそれが印字され現在でも踏襲されています。
日本の紙幣は世界一丈夫で質が良いと言われています。
デザインは日銀や国立印刷局の意見を財務省が検討し、最終的に財務大臣が決定。
そして国立印刷局の工芸官が絵を描くという手順になっています。
また紙幣番号に同一のものはないと言われますが、実際には色違い同番号の物が生まれることもあります。
6桁の数字をアルファベットで挟むことで130億近くの番号が作れて、さらにそれも使い切るとインクの色を違えていくのです。
「千円札の番号 褐色から紺色に」 日本経済新聞 2018/10/18
財務省は18日、千円札の記号と番号の印字色を現行の褐色から紺色に変更すると発表した。2019年3月18日以降に発行を始める。数字と記号の組み合わせは129億6千万通りある。今年度中に全ての組み合わせを使い切る見込みのため、色を変えて対応する
お札は独立行政法人の国立印刷局で、コインは同じく独立行政法人造幣局で作られています。
国の根幹であるお金を正式な役所ではなく独立行政法人が制作するというのはいいのかと思ってしまいますが、世界ではカナダ、ドイツ、オランダなど紙幣製造を民間に委託している所もあるそうです。
また日本でも、5円硬貨は円形に打ち抜く所までは民間に委託しています。
日本の印刷局は高い技術が信用され、外国の紙幣や切手製作を請け負うこともあるといいます。
そして製造したお札を日銀におさめ、日銀が民間銀行にお金を渡した時をお札の発行といいます。
聖徳太子や伊藤博文の紙幣はもちろん、明治18年発行の大黒像1円札(通称「大黒札」)もまだ通用停止になっていないので額面通りの「1円」で使用できます。
しかしこの大黒札は、今はアンティークとして1枚4万円から30万円の価値があるそうです。
大黒札は、現在使用できる最古の紙幣です。
お札の原板は銅板に手彫りし、これを電気メッキ方式で大量コピーして印刷に使います。
お札は大型紙にまず20枚分印刷されますが、大型紙の時も一枚ずつに裁断されたあとも一枚一枚肉眼で厳重なチェックを受けます。
1万円札と5千円札の製造原価は20円、千円札は発行枚数が多いので割安になり15円ほど。
1円玉と5円玉は額面より製造費の方が高く、それより高い硬貨になると製造原価は額面に比べ一気に安価になっていきます。
紙幣や高額硬貨で、低額硬貨の製造費の穴埋めをするということでしょうか。
あるミステリー小説で、偽札を作るのに透かし部分は特殊なオイルで印刷するということをしていましたが、実際の透かしは紙の厚さを線状に変えて、肖像を浮かび上がらせています。